人物列伝マルフィーザ

 

== 出自 ==
初登場は、『恋するオルランド』の1巻10章。若きインドの女王です。たぶん、20歳前後ってとこじゃないでしょうか。
『狂えるオルランド』によれば、もともとはルッジェーロと双子の兄妹の関係だったことになってます(『狂える』36歌)。ようするに、彼女もヘクトルの血を引いているわけですね。
なんか終盤になって突然振って沸いたような設定な気がするけど、『恋する』の作者のボイアルドはそんな設定考えてたんでしょうか…?
ルッジェーロの方が足が速かったから逃げ切ったけど、マルフィーザは捕まって誘拐されたそうです。
養父のアトランテは凄腕魔法使いのクセに何をやっていたのかと。取り返しに行けよ、という話ですね。
その後は、ペルシア王に奴隷として売り飛ばされ、成人後はレイプされそうになったところを家臣と王、王の血筋を皆殺しにして国を奪ったそうです(『狂える』38歌14〜15節)。
え、ペルシアじゃなくてインドの女王じゃなかったけ、とかいう突っ込みは禁止。一応、「18歳を1月か2月過ぎるまでに7つの国をこの手で奪った」と発言してるんで、インドの女王でもあったんじゃないですけね。
だって、明らかに作者はインドと中国を区別できてないし、ペルシアもインドもごちゃごちゃじゃなかったのかしら。


== 戦歴 ==
かなり好戦的で、揉め事があればとりあえず戦おうとする先頭民族サイヤ人みたいな性格をしてます。
なにしろ、将来の夢はフランス皇帝シャルルマーニュ、セリカン王グラダッソ、タタール王アグリカンを捕虜にすること(1巻10章)だという。
当然、戦闘能力も高い。リナルドやマンドリカルドといい勝負だし、ゼルビンあたりには余裕で勝ってます。
引き分けが多いですが、負けはたぶん、ブラダマンテ戦だけ(『狂える』36歌)。ただし、ブラダマンテは「相手を必ず落馬させる金の槍」を装備していたので、もともと公平な勝負とはいえません。ていうか、落馬しただけでまだ戦い続けようとしてた点を考慮に入れると、負けにカウントしていいものか。
あとは、アストルフォの使う魔法の角笛を聴いて逃げ出したりしてますが、これもどうかな、と

== 作中での活躍 ==
初登場時はアルブラッカの援軍としてやってきたのですが、リナルドとの一騎打ちをキタイのガラフロン王に邪魔されたことに激怒し、以後はリナルドと一緒にキタイを攻撃する側に回る。一体、何をしにきたんだ、コヤツは…。
あとはその好戦的な性格ゆえ、積極的に戦いを求めていきます。
ただ、ブルフィンチ版では残念なことに、彼女の戦闘シーンがすべてカットされています。
そのため、なんかルッジェーロの妹キャラ以上の活躍はしません。
私は先にブルフィンチのを読んでから『狂える』と読み、そのあと『恋する』の方を読んだのですが、結構衝撃は大きかったです。全然キャラが違うじゃないか、と。
大体において、ブルフィンチ版はいくつかのエピソードをカットしているために、キャラのイメージが変わる場合もあります。リナルドの場合、紳士的で女性に優しいシーンがカットされたり、オルランドの場合、足の裏以外が不死身、という設定がカットされたり。
ですが、マルフィーザの場合は戦闘シーンがすべてカットされているために、性格自体が変えられてます。登場時期も『恋する』の1巻から出てるのに、ブルフィンチだと終盤に登場するとかになってるし。
たぶん、ブルフィンチ版で一番不遇なキャラなのかもしれない。


== 魅力 ==
マルフィーザの最大の魅力は、オルランドと同様に「強さ」です。
女の人か、鎧武者を叩きのめしていく姿はけっこう痛快なものがありまして、見てて楽しいです。
女戦士には他にブラダマンテもいますが、彼女の場合はなんか女々しさがあるのでよ。女だから当然なのですが。この点、マルフィーザはただひたすら強く、恋なんかせずに戦うだけ。
そもそも、『狂える』でフランスくんだりにまで来ているのはパラディンと戦って腕試しをしたいから、という理由だし、みんなで旅するよりも1人で旅する、とか言い出したり。
前述にように、ブルフィンチ版は残念で仕方がない。
あと、結構「抱きつきクセ」みたいなのがあって、久しぶりに出会った人に抱きつきます。
ルッジェーロとかは兄妹だからいいけど、アストルフォとかにも普通に抱きつきます(『狂える』18歌101章)。
ちょっぴり萌えますね。


== 活躍一覧 ==
タタールの包囲攻撃を受けるアルブラッカに援軍として登場。リナルドと互角以上に戦う(1巻10章、12章)

ガラフロンに立腹し、アルブラッカを攻撃する側に回る(1巻13章)

ブルネロによって剣が盗まれる。以降、アルブラッカ攻撃から離脱し、ブルネロを追跡(2巻5章)

ブルネロ追跡のため、鎧を捨てる。

で、フロリマールから武具一式を奪い取る

腕試しの旅の途中、アストルフォとサンソネットに出会う。一緒にダマスカスへ(以下、すべて『狂えるオルランド』。18歌)

ダマスカスの馬上試合に参加。大乱闘をする。和解後は、サンソネットに手柄を譲るため、試合は辞退(18歌)

乗ってた船が大破。アストルフォらと女族の土地に流れ着く(19歌56節)

女族の土地で、男相手に怒涛の9人抜き。10人目のグィドーネ・セルヴァッジョとの対戦中に夜になったので試合中断。
グィドーネとともに女族の土地を脱出するも、アストルフォとはぐれた(20歌)

「臆病な鹿は群れるが、虎や鷹は一人で旅をするものだ」と言ってグィドーネやサンソネットらと別行動。
連れになった老婆(ガブリーナ)を嘲られたので、ピナベルと乙女を叩きのめす(20歌113節)

深い理由もなく、ゼルビンと戦い勝利。老婆の世話を押し付けた(20歌123節)

ルッジェーロやリッチャルデットと出会い、腕試しを挑む。
「異教徒に護送されてるマラジジたちを助けるのに忙しい」と拒否されると、リッチャルデットらと協力してイスラム軍を打ち破る
このとき、ルッジェーロはマルフィーザの戦いぶりを戦さの女神ベッローナと評している(26歌はじめ)

ドラリーチェを巡り争っていたロドモンとマンドリカルドは、女装したマルフィーザをモノにしようとする。
マラジジ、ヴィヴィアン、グリフォンらが敗退するも、「自分が負けないかぎりお前のモノにはならない」と宣言。
マンドリカルドとかなりいい勝負をするも、ロドモンの仲裁を受け入れる(26歌半ば)

マンドリカルド、ルッジェーロ、ロドモンらが喧嘩する。
仲裁に入るものの、マンドリカルドへの反感から一緒に喧嘩する(26歌終盤)

ルッジェーロらとともに、キリスト教徒軍に大損害を与える。
このとき、リナルドやオルランドは不在だった(27歌はじめ)

マルフィーザ、マンドリカルド、ルッジェーロ、ロドモンたちの仲があまりに悪いので、決闘で解決することになる。
くじの結果、マルフィーザとマンドリカルドの対決は3番目。
第2試合でルッジェーロがマンドリカルドを殺しちゃったから、マルフィーザの試合はなくなった(27歌)

イスラム軍の中にブルネロを発見。剣を盗まれた恨みから捕らえて殺そうとする。
ブルネロはアグラマンテの家臣なので、彼の怒りを買う(27歌86節前後)

誰もブルネロを庇わないので、そんな穢れた血で剣を汚したくない、と言って首吊りで殺す(32歌9節)

マンドリカルド戦で重傷を負ったルッジェーロを看護するという情報が、ブラダマンテの耳に入り嫉妬される(32歌31節)

ルッジェーロが浮気したと誤解したブラダマンテが殴りこみをかけに来る。
「金の槍」の魔力によって落馬させられ、かなり危ない目にあう。
マルフィーザの明確な敗戦はこの部分のみ(36歌20節前後)

ブラダマンテと剣で再戦。ルッジェーロが頑張って止めるけど無視する。
最終的に、アトランテの霊が現れ、ルッジェーロとマルフィーザが兄妹であることなど告げて和解。
アグラマンテが父の仇と知ると、イスラム軍を抜け、ブラダマンテとともにシャルルマーニュ軍入りを決意(36歌59節前後)

ブラダマンテ、ルッジェーロとともに村で恐怖政治してたマルガノールを退治する。
「女の敵は、許さない。以後、この村で妻に逆らう男は殺すぞ」と警告する(37歌)

ルッジェーロと別れ、ブラダマンテとともにシャルルマーニュ軍入り。
テュルパンからキリスト教徒の洗礼を受ける(38歌はじめ)

ルッジェーロが失踪して悲嘆にくれるブラダマンテを慰める(42歌27節)

ルッジェーロがキリスト教軍入り。兄に抱きついて喜ぶ(44歌30節)

ブラダマンテとレオが結婚させられそうになったので、シャルルマーニュに意見する(45歌103節)

ルッジェーロの代理として、「一角獣の騎士」と戦うと宣言する(46歌57節)

ルッジェーロとブラダマンテの結婚式に参加(46歌108節ころ)


2010/08/30

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