第2回 古めかしい表現

 

さて第2回、っていうかもう第1回でほぼ出し尽くした感じで特に書くことがない。
以降は訳していた時の思い出話とかにしようかとすら思ってます。
さて、前置きはさておき第2回。

さて、経験を積めばわりとなんでも読めるようになってきているから、そろそろ小説とか長いものに手を出したくなると言うのが人情と言うもの。
別に、現代モノを読みたい人は別に問題はないでしょう。
ただ、アーサー王物語みたいな騎士物語を読みたいと言う方には問題が発生します。
古い物語の場合、高校では習わないような古い単語とか語法があるのです。

 

== 二人称単数現在形 ==
まずは『国王牧歌』の『ガレスとリネット』から、リネットがガレスを罵る場面を御覧下さい。

'Ay, wilt thou finish it?
Sweet lord, how like a noble knight he talks!”

さて、これを訳せる方はおりますでしょうか?
基本的に、中学生レベルの単語が多いしルネットが罵るシーンだ、というヒントもあるから意味はおよそつかめたでしょう。
ただ、問題は「wilt」と「thou」でつまずいた方が多いのではないでしょうか?
実はこれ、いまは死後となった二人称単数現在形というやつなのです。

ほら、三人称の場合動詞の語尾に「-s」がつくから、
「He plays soccer」(彼はサッカーをする。)
――というようになるのは中学生で習うはず。
で、これが二人称として「you」を使わず「thou」をつかった場合、動詞は基本的に語尾に「-est」がつくので、
「Thou playest soccer」(汝はサッカーをする。)
――と、なるのです。

ま、実際問題、「thou」はほとんど死後。現在はお祈りのことば、神への呼びかけとかに使われるため、聖書とかでよく見ます。
日本語では古めかしく「汝、そなた」とか訳されるみたいですね。

だから、さっきのを和訳すれば、
'Ay, wilt thou finish it?
Sweet lord, how like a noble knight he talks!”
(ふん、あんたがやり遂げるですって?
あなたときたら、まるで高貴な騎士みたいなことをいうのね!)
と言ったところでしょうか。

ほか、不規則変化だと「will」は「wilt」に、「have」は「hast」に、「shall」は「shalt」になります。
で、「you」(君は)、「your」(君の)、「you」(君を)、「yours」(君のもの)に対応させて、
「thou」(汝は)、「thy」(汝の)、「thee」(汝を)、「thine」(汝のもの)と変化します。
『国王牧歌』なんぞはこういうのを知っていないと基本的に読めません。
――と、いっても英作文をしろ、というのでなく読み取れればいいのだからそんな難しくはないです。
詳しくは、ウィクショナリーを見てください。
http://ja.wiktionary.org/wiki/thou


== 頻出単語 ==
さて、文法の次は単語です。
騎士道物語には、およそ英字新聞などを読んでいてもお目にしないような単語がばしばしでてきます。
たとえば、「damsel」は「乙女」という単語。普通、いまの人なら「girl」っていうんじゃないかな?
よくアーサー王物語を読んでて、「乙女」という単語がばしばし出てくる反面、「少女」という単語がほとんど出てこないのはこういうところに原因がるのです。
ただし、『湖の乙女』は別。あれは「Lady of the Lake」とか「La Dame du Lac」で「湖の貴婦人」と和訳する方がたぶん、訳としては正確。

ほかだと、「swear」(誓う、罵る)とかもそうかな。逆に、「prpmise」とかは騎士物語で見たことがない気がする。
「joust」(馬上槍試合)なんかも騎士物語独特の単語ですね。
ま、この手の単語はあげるとキリがないのですが、押さえておくとよさげ。


== おわりに ==
と、つらつら書いてきましたが、私はこういうのを教科書とかなしで、勘で読んでました。

たとえば、リネットの罵倒語だと、
「Thou art not knight but knave.」って文章を見て、
「えっと、あなたは 芸術 ではない 騎士 しかし ろくでなし…。意味が分からない。この『art』は『芸術』じゃなくて…、あぁ、『are』の変化形じゃないの? そしたら、『あなたは騎士じゃなくて、ろくでなしだわ』、とか言う感じになるな…。」
みたいなことを考えながら読んでました。
で、ちょっと読み進めて『Thou art 〜』って文が出てきて矛盾なく読めれば正解、って感じで。

これでなんとかなってしまうものです。
というか、知らない単語が出てきても、基本的に考えればある程度分かりものです。
ま、とりあえずやってみてください。

2010/01/30
 

back

inserted by FC2 system