7章 アーサー王の結婚

これを受け、アーサー王は自分が最も愛し、また名誉のある戦士であるランスロット卿を、王妃の迎えに派遣することに決めると、城門からランスロットが出発するのを見送った。
ランスロットの出発は4月の末であり、道には花々が咲いていた。そして、ランスロットはグィネヴィアを連れ、5月に帰還したのである。
グィネヴィア達が到着すると、ブリタニアの教会長である聖ダブリックはグィネヴィアを祭壇の前で迎えた。
そして、結婚式の朝、アーサー王は汚れのない純白の衣装に身を包み、騎士達の祝福の中栄光のある誓いを立てた。
開け放たれた扉の向こうで5月の大地が光り輝き。真っ白な5月の花(サンザシのこと)で包まれた神聖なる祭壇で、5月の太陽を浴びながらアーサー王はこの大地で最も美しいグィネヴィアを見つめた。
花の香の中、賛美歌が鳴り響く中、アーサーがキリストの聖地に愛を誓ったとき、水のせせらぎのような声が聞こえていた。

アーサーは、
「私とそなたの運命は同じ。
どのような偶然がおきたとしても、死ぬまでそなたを愛し続けよう!」

王妃も目を伏せたまま答えた。
「陛下、私の夫よ。私も死ぬまで愛しますわ!」

聖ダブリックは指を広げると、
「愛とともに生きよ、ともに世を作るのだ。
そなたは王妃と結ばれ、1つの存在となるがいい。
そして円卓の騎士団よ、陛下の偉大な目的を果たすのだ!」

丁度、聖ダブリックが喋っているとき、入り口で立っていたローマの大貴族は、宮廷が死んだような静寂であるのを嘲るように退出していた。
一方で騎士達は金糸織の服に身を包み、太陽の明かりの下を行進した。その行進は、トランペットを鳴らしながら、アーサー王の騎士らしさを称えながら行われたのだ。

「トランペットを鳴らすのだ、5月の白き世界のために。
トランペットを鳴らすのだ、長き夜は明けたのだ。
トランペットを鳴らすのだ、陛下の治世の始まりだ。

「ローマ人や異教徒がアーサーの王国を支配することがあるだろうか?
剣と槍を振るい、戦斧を兜に打ち下ろせ。
戦斧を打ちおろせ、剣を振るえ!
陛下の治世の始まりだ。

「陛下のために戦って、陛下のために生きるのだ!
神が陛下に秘められた言葉を告げるのを、我ら騎士団は耳にした。
戦斧を打ちおろせ、剣を振るえ!
陛下の治世の始まりだ。

トランペットを鳴らすのだ、陛下は我らを救い給う。
トランペットを鳴らすのだ、力は強さを増し、肉欲は滅びてしまえ!
戦斧を打ち鳴らし、剣を振り回せ!
陛下の治世の始まりだ。

陛下のために戦って、陛下のために命を落せ!
陛下は陛下で、気高き意志の持ち主だ。
戦斧を打ち鳴らし、剣を振り回せ!
陛下の治世の始まりだ。

鳴らせ、力強き5月の太陽のために!
鳴らせ、日ごとに強くなる太陽のために!
戦斧を打ち鳴らし、剣を振り回せ!
陛下の治世の始まりだ。

陛下はキリストに従い、我らは陛下に従う。
神の息吹は、我らに秘められた力をもたらした。
戦斧を打ち鳴らし、剣を振り回せ!
陛下の治世の始まりだ。」


ep
このように歌いながら、騎士団は宮廷に戻ってきた。
晩餐会で、王妃がゆっくりと退出すると、ローマの大貴族は大股でやって来て、古めかしいやりかたで賛辞を送った。
だが、アーサーは、
「見るがいい、騎士達は私の戦争のために戦うこと、さらに王である私にに忠誠を誓った。
ローマの旧体制は終わり、新しい時代が始まるのだ。
我らは父なるキリストのために戦う。
だが、君達ローマの力は弱体化し、ローマの城壁内から異教徒を追い払う力さえもっていない。
そんな君達からの賛辞はいらない。」

これを聞いて気分を害したローマ貴族が帰還し、やがてアーサー王はローマと戦うことになる。

それから、一致団結したアーサー王と騎士団は小さな公爵領から力を集め、12の大きな戦争で勝利すると、異教徒の群を追い払った。
こうして、王国に平和が訪れたのである。

the end

2009/7/4


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