2章 アーサー王の出陣
やがて、レオデグランはアーサー王が戴冠した情報を聞きつけた。
その一方で、このような噂も騒がれていた。
「アーサーはウーゼルの息子ではない。」と。
また、「アーサーは救世主だ。我らを殺す人間と獣から守ってくれる人物だ」
とも噂された。
この時点でアーサーはなんらの武功も立てたことはなかったが、話を聞き付けてレオデグランのもとへやって来た。
そして、グィネヴィアは城壁の近くでアーサーが通りかかるのを目にした。
アーサー王は兜や盾について黄金で王家の紋章を飾り立てることもなく、単に騎士の姿をして騎士団の中にいた。
騎士団の中には、アーサー王より豪華は姿をしている者も大勢いた。
大勢の騎士の中、兜もかぶらず素顔をさらしているアーサーを見つけることができたかもしれなかったのだが、結局、グィネヴィアはアーサー王を見つけることができなかった。
だが、アーサー王の方ではグィネヴィアの瞳の中に光を感じるとともに、衝撃を受けた。
そこで、アーサー王はまだ進軍可能であったが、近くの森に天幕を張らせることにしたのだった。
やがて、アーサー王は異教徒を追い払うと、獣を殺し、暗い森と荒野を切り開いて太陽の光を入れた。
さらに、猟師が通行できるよう、また騎士たちが帰路につけるように道を整備した。
それからも、アーサー王はなかなかその場を立ち去ろうとはしなかった。
反逆心を持った大貴族や領主達はやがて内乱を引き起こしていた。
反逆したものは大方たいしたことのない貴族であったが、
「誰が我らを支配すると言うのだ?
誰がアーサーをウーゼル王の息子だと認知したのだ?
見たところ、アーサーの顔、ふるまい、体格、声、何をとってもウーゼル王と似た点はないではないか!
奴は王などではない。ゴーロスの息子か、アントンの息子にすぎない。」
と主張していたのである。
アーサー王はかなりの苦痛を感じながら戦い続けた。
そして、アーサー王はグィネヴィアとの結婚を望みながら戦っていた。
アーサー王はこのように考えるのだった。
(グィネヴィアの父親は、自分達を殺しまわる人間と獣に苦しんでいると言っていたっけ。
グィネヴィアをそんな獣のはびこる土地から助けあげ、私の王国に住まわせたらどうだろう?
そして、彼女には私の隣の席に座って貰うのだ。
支配者である孤独な王にとっての幸せとは何だろう
あぁ、私の頭上で揺れる星々よ、
私の足元で響きを挙げる空虚な大地は、我が夢を壊してしまうのか?
この世で最も美しい彼女と結婚させたまえ。
この世界、我が領土の全てを探し回ったとしても、私の意に沿う女性を見つけ出すことはできないだろう。
だが、もし彼女と結婚できたなら、我らは2人がまるで1人の人間のようにぴったりと結合し、この暗黒の世を、光輝く世界をして統治できるだろう。そして、この力は世界を生き生きと活性化させるのだ)
その後、アーサー王が話したように、アーサー王が松脂を塗った天幕とともに輝く戦場にたどり着くと、世界は清らかに澄み始め、アーサー王は遥か離れた場所の小さな岩を、そして昼間ですら明けの明星を見ることができたのである。
それから、アーサー王があちこちに自分の旗を立てたせれば、どちらの陣営からもトランペットの音が鳴り響き、ラッパの音は血をたぎらせ、騎士は馬を走らせた。
かつては貴族や諸王がアーサー王を負かせたが、今ではアーサー王が勝ち、この地を支配するようになったのだ。
しかし、アーサー王が武力で、そしてより力強い一撃をお見舞いする以前は、世界を巡る稲妻と雷の力が襲いかかり、すべての目はくらんでいたのである。
そしてアーサー王はカドール王、ウリエン王、ウェールズのカディモント王、クラウディアス王、ノーサンバランドのカリアンス王、ブランダゴラスのラタンゴール王、アイルランドのアングイスタント王、モーガノール王、オークニーのロット王を従えるようになった。
(ここの部分の人名は非常に適当。たぶん、ていうか明らかにテニスンは原文の名前をいじっていると思われ。たとえば、原典のアイルランドのアングウィシュと発音したいのだが、Anguisantはどーやってもアングウィシュとか読めない)
断末魔の声をあげる直前、人は自分の罪深さを知り、1人のときどんな行動を取ってきたかを思い知る。
それから、世界は眠りに付き、人は活動をやめて昇天してしまうのだ。
アーサー王は敵を切り裂いて昇天させた剣を持つ戦士に呼びかける。
「見ろ、敵は降伏したぞ!」
虚飾的なけばけばしかった戦場は静寂に包まれ、全ての生物は死に絶えたかのよう。
だが、アーサー王の心は喜びに支配されていた。
アーサーは最も信頼し、愛してやまない戦士達に笑いかけると、
「諸君は私が王であることに疑がわず、今日、私のために武力を捧げてくれた」
「陛下、万歳」とその騎士は叫んだ。「神の火は、戦場で陛下の上に落ちてきた。だから、俺はアーサー王こそが王であると信じているのだ!」
また、アーサー王の側で護衛をしていた2人の騎士も、戦場において不滅の忠誠を誓っていた。
それからアーサー王は言った。
「神にかけてこの言葉を誓う。
いかなる偶然が起きたとしても、私は諸君らを死ぬまで信頼しよう」
それから、アーサーは戦場からウルフィウスとブラシティアス、それからアーサー自身が任命したべディヴィアをレオデグラン王の下に派遣した。
2009/6/14