解説

 

「ベイリンとベイラン」、これにて終了いたします。
最後までお付き合いくださった方はありがとうございました。
そして、とりあえず解説から読まれる方、ネタバレを若干含んでいますので御容赦のほどを。

ベイリンというキャラは、なんでも後期流布本とかいうのが発祥とのこと。
私が調べた限り、『ブリタニア列王記』などには存在を確認できなかったので、最近の人物と言うことになるのでしょう。
だいたい、ちょっとフランス語を知っていれば分かりそうなものですが(後述)、「ベイリン・ル・ソヴァージュ」なんて明らかにフランス語ですし。
で、後期流布本をイギリスに逆輸入したのマロリーの『アーサー王の死』でも登場してて、たぶんこれ公式設定ではなかろうと。

その『アーサー王の死』の設定とテニスンの物語は、色んな部分で違っております。
テニスンの『国王牧歌』にはマロリー版の設定に忠実に書かれているのもあれば、ちょっと設定を変更したもの、ほぼオリジナルなものがありますが、『ベイリンとベイラン』はかなりいじった方に入ると思う。
たとえば、ベイリンは「双剣の騎士」(Knight with Two Swords)って設定がまったくでてきません。
ベイリン・ル・ソヴァージュ(Balin le Savage)はそもものの形では出てこなかったけど、ザ・サヴェジ(the Savage)って英語表記ででてきましたけど。
また、グィネヴィアへの行き過ぎた崇拝の要素なんか入ってますね。
最大の違いは、ロンギヌスの槍による、「嘆きの一撃」の相手でしょう。
正直、このへんは訳しててちょい悲しかった。

版によれば、この後ヴィヴィアンが宮廷にベイリンとベイランの死を宮廷に報告するシーンとかあるそうです。その辺は、コチラのアーサー王サイトさんで読んでください。少なくとも、私の手持ちの版にはないし、下手に引用もマズイし。

まぁ、感想を一言でいうと、「またランスのせいかヨ! つくづくコイツはいらんな…」でした。
なんかヴィヴィアンが悪いことをするのは構わんが、ランスには偽善の匂いがして管理人は好きではありません。

そういえば、「アーサー王物語」を読んでて、ベイリンの他にも「ル・ソヴァージュ」を名乗っているのって結構見ます。
ぱっと見、「ル・ナニナニ」とか「ラ・ナニナニ」って来ると苗字みたいで血縁ありそうな気がしますが、違います。
ここで、簡単なフランス語の講義をしますと、「ル」は定冠詞。英語だと「ザ」と同義。
「ソヴァージュ」は直訳すれば「野蛮」だから、「ベイリン・ル・ソヴァージュ」は「蛮人ベイリン」とかなんかそんな感じ。
で、ソヴァージュは苗字ってより、称号なのですね。

他、ルイ14世なんか「太陽王ルイ」で、ルイ・ル・ソレイユ(Louis le Soleil)とか「ルイ大王」でルイ・ル・グラン(Lois le Grand)って呼ばれているけど、ソレイユ(太陽)とかグラン(偉大、グレート)は苗字じゃないし。
プロレスラーで言えば、アンドレ・ザ・ジャイアントとかアブドーラ・ザ・ブッチャーみたいなもんかな。たとえが古すぎるけど。

これが、「ドゥ・ラ・地名」(ドゥ・レは文法上存在しない)みたく地名がつくと、「どこどこの領主」みたいな感じで親子間で一致するのですけど。

ついでに、訳文中でのお遊びの解説をば。
作業中のストレス解消に、ちょっと遊びが入ってます。
具体的には、初期においては三国志ネタ、中盤以降は章タイトルの方で遊んでます。
そうでもしなきゃ、HTMLへの変換作業が辛すぎてやってられない。
個人的には、SWINGING POPCICLEからとった13章の「サテツの塔」とかお気に入り。
ただね、8章の「黯然銷魂」はともかくとして、11章が「多情剣客無情剣」だったり、15章の「剣は無情、だが人は?」とか古龍の武侠小説ネタは危険すぎるのでやめました。
下手にググって、ココに来られたら申し訳がたたんもん。

 

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