12章 ヴィヴィアンの歌
マーク王の宮廷から出て来た乙女の健康的な歌声が響いてきた。
乙女は従者とともに、馬で森に進んでいる。
その乙女の名はヴィヴィアンである。
(注・『国王牧歌』の設定ではヴィヴィアンはなんかマーク王からみのポジションにいる。
この物語の後、6番目の物語である『Merlin and Vivian』とか参照)
「天の火は、つらい寒さを打ち払う、
そして平野や荒野を輝かす。
新緑は古い葉を追い払う、
天の火は、地獄の炎とは違うのよ♪
年寄り司祭は、ぐだぐだ言いながら聖書を読む。
年寄り修道士に修道女、
奴らは世界の希望を軽蔑してる。
霜の降りる独房で、奴らは火を感じてる!
天の火は、地獄の炎と違うのよ♪
天の火は、埃だらけの道に届く。
小道の花々は炎によって開くのよ。
木も、そして世界の全ては賛美の声を響かせる。
天の火は、地獄の炎と違うのよ♪
天の火は、すべて良き者を統治する、
そして火の血の中では、誰も飢えたりはしない。
でもその後にヴィヴィアンは洪水を起してちゃうの。
天の火は、地獄の炎と違うのよ♪」
こう歌うと、ヴィヴィアンは従者に話し掛けた。
「この天の火は、つまりは古き太陽崇拝ねぇ。
天国の火は再び上昇すると、大地に十字を刻むことになると思うわ。
そして、アーサー王と円卓をぶち壊すのよ!」
雲一つない晴天の中、森の長い道路の前、輝く王家の紋章入りの盾が落ちている。
ヴィヴィアンは楡の木の下に軽く目をやると、驚いて従者に言った。
「見なさいよ、あの紋章はアーサー王宮廷でかなり身分の高い人のだわ。
あ、あそこには馬がいるわ! じゃ、乗り手はどこかしら…。
まぁ、森の向こうには死体が転がっているじゃないの…、いやいや動いたわ、生きてるみたい!
眠っているだけみたいね。
ようし、話しかけてみようかしら。」
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