1章 追放の兄弟
cap-1
かつての戦争で、ペラム王はロット王に敗北し、捕虜に取られた。
ペラム王の領土は回復したものの、属国にされてしまう。
最近は、貢物の献上も遅れがちになっていた。
そこでアーサー王は長年勤め上げている会計係を呼び付けると、
「彼と一緒に出かけよ。そして貢物を持って来るのだ。
さもないと、神にかけてペラム王よりふさわしい人間を王座に付けるぞ。」
会計係は答えた。
「承知しました。ですが、聞いてください。
キャメロットの近く、森から1マイル下ったところの泉に2人の奇妙な騎士がおります。
この騎士達はやってくる騎士に挑戦しては打ち負かしております。
途中、彼らと同行して、来ても連れて帰って来てもよろしいですか?」
アーサー王は呵々大笑して答えた。
「こやつめ、ハハハ!
古き友よ。もはや若いとは言えない年齢の友よ。
そんなことを言っていないで、早く出発するのだ。
だが、その騎士達より力強いものが現れるまで、その者達に席を与えてやろう。」
cap-2
そうして、アーサー王は宮廷を出発した。 すぐに夜が明け、その輝きはアーサーの心に若さを取り戻すのだった。 アーサー王は武装して出発すると、泉にたどり着いた。 そこにはベイリンとベイランの兄弟が、まるで銅像のように座っていた。 兄弟の右と左に泉があり、その近くには、 メシダの木が歌い、その下では砂が踊る。 ベイリンのすぐ右側には足の速いベイリンの馬がおり、 ベイランのすぐ左側、ポプラの木の近くにはベイランの馬がいる。 アーサー王はこう話しかけた。 「気高き卿ら、汝らはどうしてこんなところに座っているのかね?」 ベイリンとベイランはこれに応えて、 「栄光をえるためです。おれ達より強い男は、アーサー王の宮廷の中にはいません。 おれ達はそれを証明しました。 おれ達を倒そうとする騎士が来たとしても、おれか弟が簡単に打ち負かしてしまいましたよ」 アーサー王はこれに対し、 「私も、アーサー王の宮廷の人間なんだがね。異教徒ととの戦いでの武功の方が、その強さを証明しているのではないかな。 私もこれまでの騎士と同じように倒すことができるなら、君達の言葉が証明されるだろうけれども。」 アーサー王は、軽く兄弟を打ち負かし、 彼らが気を取り戻す前に帰って行った。