第3章 ガウェインが悪魔の騎士と対決すること

 

偽ガウェインの話はさておいて、ガウェインはさらに旅を続けた。
ていうか、これ、目的地がわかって移動しているのかな、と管理人は思ってしまうのだけれども、なんとか行くものである。

誘拐した騎士と乙女は、ある城にたどり着いていた。
夜も更ける前だったので、2人は城に泊めてもらうことが出来た。

が、ガウェインがその城にやってきたときにはもう夜中。
「今晩は、入れてください」
と、挨拶をしても、明日また来なさい、と追い返される始末である。

「仕方ない、野宿をするか」
と、ガウェインはつぶやいた。
いいとこのお坊ちゃんなはずなのに、そこはかとなくワイルドである。

そんな城の近くには、荒廃した墓地と、朽ち果てた教会があった。
どういう思考回路を通したのかは知らないが、ガウェインは教会でなく、墓地で寝ることした。
屋根の下で寝ようと思わなかったのか、管理人は不思議で仕方ない。入るのを躊躇するほどに教会ばボロかったのだろうか。

しばらくたつと、どこからか馬に乗った青年がやってきた。
青年は、墓地でごろごろしているガウェインを見ると、
「ぎゃぁ、あ、悪魔! こ、殺さないで下さい」
と、叫んだ。

「いや、私は悪魔ではありません。円卓のガウェインです」
と、ガウェインは自己紹介する。
あからさまに不審者であるが、どうやら青年はガウェインの身元を理解したようである。

「はぁ、ガウェイン卿でしたか。どうしてこんなところに?」

「もう遅いというので、城に入れてもらえなかったのです。
で、ここで野宿をしているわけです」

「それはいけない!」と、青年は言った。
「あすこの城主は、私の姉妹の夫(兄弟順が読み取れないので、日本語として不自然な表現になってます・・・)、つまり私の義理の兄弟なのです。
私が行けば入れてもらえますよ。いつも私は遅くなると、城壁からロープを垂らしてもらっているのです。
ここは悪魔が出る危険な墓地です。私と一緒に城に行きましょう」

ガウェインは少し思案すると、丁重に、
「せっかくですが、やめておきましょう。
馬を残していくわけにもいきませんから」
と申し出を断った。

ただ、ガウェインは、城の中で乙女を誘拐した騎士が、乙女と別の寝室で夜をすごすように手配してくれ、と青年に頼んだ。
見事な気配りである。でも、よくよく考えると、乙女の誘拐がペンテコステの翌日の晩で、この時点で乙女が誘拐されてから2度目の夜。もう貞操とかそういうものは遅いんじゃないかな、と管理人は野暮な突込みを入れてしまうのである。
いやむしろ、ガウェインの価値観だと、自分の馬の命の方が乙女の貞操より価値があるということにはならないか。

名残惜しげにガウェインを残して青年が去っていくと、ガウェインはまた一人っきりになった。
墓石に腰掛けてうとうととしていると、突如、ある墓石が動き出した。
何事! と動き出した墓石を見ると、その中から棺が現れる。そして、棺の上蓋がずずっ、と音を立て、中から赤と緑の色のローブを着た、金髪の乙女が出てきたではないか!

(まさか、話に聞いていた悪魔と言うやつか?
いや、見たところ屍鬼(グール)だとか悪魔の類ではないようだぞ・・・)

意を決したガウェインは、金髪の乙女に話しかけた。
「乙女よ、そなたは一体何者だ?」

「あぁ、騎士さま!」と、乙女は言った。
「私は悪魔の虜囚なので御座います。
私の実母が亡くなると、父は後妻を娶りました。
この後妻は私の美しさをねたみ、私を狂気に陥れる呪いをかけたのです。
ですが、あるとき、人の姿をした悪魔の騎士がやってきて、私の狂気を取り除いてくれたのです。
ですが、それには条件がありました。悪魔の騎士の恋人となることです。
もっとも優れた騎士が私を解放してくださるまで、私は悪魔の虜囚なのです」

「そういうことなら、私が力になりましょう」
と、ガウェインは力強く請け負った。

「あぁ、ありがとうございます!
ですが気をつけてください。悪魔の騎士と対峙していると、勇気が失せて力が入らなくなります。
そんなときは、あの教会の十字架を目に入れてください。それで、力がもどりますから」

乙女がこれだけ説明するや否や、悪魔の騎士が墓地に姿を現した。
悪魔の騎士は、乙女がガウェインを一緒にいるところを見ると、嫉妬し、怒り狂うとガウェインに攻撃を仕掛けてきた。
ガウェインもまた、のぞむところ。悪魔の騎士に応戦する。

戦いは長く続き、互いに何箇所も切り傷を作った。
また、ガウェインは戦っているうちに気力や勇気が徐々に失せていくのを感じた。
中国風に言えば、悪魔の騎士は「吸星大法」を使いながら戦っているようなものか。このサイト来ている人の何割が判るのが不明なネタではあるが。

(これはいけない!)
ガウェインの動きが鈍くなってきたのを感じた乙女は、
「教会の十字架を見るのです!」
と、助け舟を入れる。
果たして、教会の十字架を目にしたガウェインは気力が回復していくのを感じた。

さらに長く続いた戦いによって、悪魔の騎士もさすがに疲労の色が見え始めた。
悪魔の騎士は、乙女が日中寝て過ごしていた棺に足を取られ、棺の中に転がり込んでしまった。
悪いことに、転んだ拍子に剣を取り落とし、また兜がはずれてしまう。これを見逃すガウェインではない。

「隙あり!」

一刀の元に悪魔の騎士の首が、胴体から切り離された。
このガウェインの勝利に乙女は大喜びをする。

こうして、疲れ果てていたガウェインと乙女は、朝が来るまで墓地で眠ることになったのである。

2010/04/30


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